ドラマ『全領域異常解決室』用語集|事戸渡し・神隠し・神の転生を解説

ドラマ『全領域異常解決室』は、不可解な事件を追うミステリーとして始まり、物語の中盤から八百万(やおよろず)の神々をめぐる壮大な物語へ変化しました。

後半では、事戸渡し(ことどわたし)、神通力(じんつうりき)、和魂(にぎみたま)など、重要な用語が次々と登場します。神の寿命や転生にも独自の決まりがあるため、一度見ただけでは関係を整理しにくかった方もいるのではないでしょうか。

映画『全領域異常解決室』はドラマ最終回の2年後を描く正式な続編です。公開前に用語とルールを復習しておけば、興玉雅(おきたま・みやび)や雨野小夢(あまの・こゆめ)の置かれた状況も理解しやすくなります。

この記事では、ドラマ『全領域異常解決室』の重要用語を、作品独自の設定と日本神話などで使われる一般的な意味に分けて解説します。

※この記事はドラマ最終回までの重大なネタバレを含みます。

最初に覚えたい重要用語一覧

まずは、物語の中心となる用語を簡単に確認しましょう。

用語読み方ドラマでの意味
全領域異常解決室ぜんりょういきいじょうかいけつしつ神や超常現象が関わる異常事件を扱う世界最古の捜査機関
全決ゼンケツ全領域異常解決室の通称
八百万の神やおよろずのかみ自然や生活のあらゆる場所に存在する数多くの神々
神通力じんつうりき神がそれぞれ持つ超常的な能力
神隠しかみかくしヒルコが神の魂を消すために起こした殺神事件
事戸渡しことどわたし神としての記憶と力を封じ、人間として生き直すための行為
和魂にぎみたま神の穏やかで恵みをもたらす働き
荒魂あらみたま神の激しく強い働き
修理固成しゅりこせい国土を整え完成させること。ヒルコは世界の作り直しを意味して使用
ヒルコひるこ直毘が計画の象徴として名乗った、神話由来の名前

この中でも、映画前に特に理解しておきたいのが「事戸渡し」「神隠し」「神の転生」です。

全領域異常解決室・全決とは

全領域異常解決室は、超常現象やオカルトに見える不可解な事件を調査する、内閣官房直轄の捜査機関です。通称は「全決(ゼンケツ)」。

公式には、警察や科学捜査では解明できない異常事件を扱う機関として活動しています。神隠し、シャドーマン、キツネツキなど、世間で超常現象と呼ばれる出来事に合理的な仮説を示し、混乱を収めるのが表向きの役割です。

しかし、本当の役割は、人間の社会で暮らす神々を守り、神に関わる事件を解決することでした。

全決は「世界最古の捜査機関」と説明されており、興玉や宇喜之民生(うきの・たみお)ら神々が、姿や名前を変えながら長い年月にわたって人間界の秩序を守ってきました。

ドラマに登場したのは主に東京の全決ですが、最終回には京都の全決メンバーが登場します。映画2作目でも京都メンバーが事件に関わることが発表されています。

八百万の神とは

八百万の神とは、非常に多くの神々を表す言葉です。「八百万」は数字の800万柱だけを意味するのではなく、数えきれないほど多いことを示します。

日本では太陽、月、海、山、火、食物、道、芸能など、自然や生活に関わるさまざまなものに神が宿ると考えられてきました。

ドラマでは、この八百万の神々が現代にも存在し、人間の肉体へ何度も生まれ変わりながら生活しています。

たとえば、宇喜之は食物をつかさどる宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)、芹田正彦(せりた・まさひこ)は道案内の神・猿田毘古神(さるたびこのかみ)、豊玉妃花(とよたま・ひめか)は海神の娘・豊玉毘売命(とよたまびめのみこと)の生まれ変わりです。

神々は特別な世界だけで暮らしているのではなく、会社員、配達員、料理研究家などとして人間社会に溶け込んでいます。この設定が『全領域異常解決室』の大きな特徴です。

神の寿命と転生の仕組み

ドラマの神々は不老不死ではありません。人間の肉体へ宿っているため、肉体には寿命があり、傷つけば死ぬこともあります。

ただし、通常の死であれば神の魂は消えません。魂が次の人間へ移り、新しい肉体で生まれ変わります。

作品内のルールを整理すると、次のようになります。

状態肉体神の記憶・能力その後
人間として寿命を迎える死ぬ魂に残る別の人間として転生する
人間に殺される死ぬ魂は残る約100年間は転生できない
事戸渡しを受ける生きている記憶と神通力を失う人間として生活する
事戸渡し後に肉体が死ぬ死ぬ神の魂も失われる永遠に転生できない

特に重要なのは、「殺されること」と「神として完全に消えること」が同じではない点です。

神が人間に殺されても、すぐには戻れないものの、魂そのものは残ります。一方、事戸渡しで神の記憶を失った状態のまま肉体が死ぬと、魂も消えてしまいます。

ヒルコの神隠し事件が恐れられたのは、被害者の肉体を殺すだけではなく、神を世界から永久に消していたためです。

事戸渡しとは

事戸渡しは「ことどわたし」と読みます。

ドラマでは、神としての記憶と神通力を封じ、人間としての人生へ戻す行為として描かれました。単に記憶の一部を忘れさせるのではなく、その神が何者だったのか、ほかの神々とどのような時間を過ごしたのかまで失わせます。

小夢は過去に一度、自ら事戸渡しを受けて人間として生き直しました。ドラマ本編で警察官として全決へ来た時点では、自分が天宇受売命(あめのうずめのみこと)であることも、興玉たちと過ごした過去も覚えていませんでした。

その後、神としての記憶を取り戻しますが、最終回で直毘吉道(なおび・よしみち)によって再び事戸渡しを受けます。そのため、映画開始時の小夢は、天宇受売命の記憶と神通力を失った人間です。

なお、事戸渡しは『古事記』や『日本書紀』にそのまま登場する一般的な神事ではなく、ドラマ独自の重要設定と考えるのが適切です。

神隠しとは

一般に神隠しとは、人が突然行方不明になることを、神や異界の存在によるものとして説明する言葉です。

ドラマ序盤の神隠し事件では、現場に衣服、持ち物、大量の血液が残り、肉体だけが消えたように見えました。ネット上ではヒルコが犯行声明を出し、自らを神と名乗ります。

物語が進むと、被害者は全員、人間として暮らしていた神だったことが判明します。ヒルコは対象に事戸渡しを行って神の記憶と能力を消した後、肉体を殺し、神の魂まで永久に消滅させていました。

そのため、作中の神隠しは普通の失踪事件ではありません。全決にとっては、神を永遠に消す「殺神事件」です。

第1話では人間を狙う連続殺人に見えた事件が、後半では神々を減らす戦争だったと分かります。この意味の反転がドラマ最大の仕掛けの一つでした。

神通力とは

神通力は、神々が持つ超常的な能力です。すべての神が同じ力を持つのではなく、神話上の役割や性質に応じて能力が異なります。

登場人物神としての正体主な神通力
興玉雅興玉神人から漏れ出す善意と悪意を見分ける
雨野小夢天宇受売命必要な人物を呼び寄せる
芹田正彦猿田毘古神驚異的な身体能力を発揮する
豊玉妃花豊玉毘売命水を自在に操る
佃未世月読命月明かりの下で時間を操る
村主虎飛矢少名毘古那神薬や医療に関係する知識と力を持つ

神通力を失っても肉体がすぐ消えるわけではありません。小夢のように、事戸渡し後は普通の人間として生活できます。

一方で、神通力の強さだけが神の価値ではありません。全決の神々は、知識、経験、人間社会で築いた協力関係も使って事件を解決しています。

和魂と荒魂とは

和魂と荒魂は、神の魂が持つ異なる働きを表す考え方です。

和魂は、穏やかに働き、人々へ恵みや平和をもたらす側面。荒魂は、激しく活動し、強い力や災いとして現れる側面です。

用語読み方主な意味
和魂にぎみたま穏やか、調和、恵み、平和
荒魂あらみたま激しさ、活動力、災い、変革

これは善と悪のように完全に分かれた別人格というより、一柱の神が持つ異なる働きです。

ドラマでは、神々の和魂が人間社会へ恵みを与え、秩序を保っていると説明されました。ヒルコによって神が減れば、その神がもたらしていた恵みも失われ、世界に不幸や混乱が増えていきます。

映画で「人間の世界と神々の世界の調和が崩れる」とされているため、和魂と荒魂のバランスも再び重要になる可能性があります。

神はなぜ人間として暮らすのか

『全領域異常解決室』の神々は、神の姿のまま人間を見下ろしているわけではありません。人間の肉体に生まれ変わり、人間と同じ社会で仕事や生活をしています。

神々の役割は、自分が担当する自然や生活の働きを守り、人間の世界の秩序を保つことです。

興玉は、人間がどれほど愚かな行動をしても守り続けるのが神の責務だと考えていました。これに対して直毘は、神が人間を助け続けたことで、人間が自力で成長できなくなったと主張します。

映画でも、人間にどこまで関わるべきか、神が人間を守る意味は何かという対立が引き継がれる可能性があります。

神の名前が生まれ変わるたびに変わる理由

ドラマでは、一柱の神が転生を繰り返す中で、異なる神名を持つことがあります。

興玉は、はるか昔には月読命(つくよみのみこと)であり、その後は天石戸別神(あめのいわとわけのかみ)、現在は興玉神として生きています。

時代・段階興玉の神名
遠い過去月読命
小夢を守った過去天石戸別神
現在興玉神

この設定は、同じ魂が役割や名前を変えながら歴史を生きてきたことを示します。

一方、宇喜之のように現在の人物名と神名が異なる人物もいます。映画で新たな神が登場しても、現代の名前だけでは正体を判断できない点に注意が必要です。

修理固成とは

修理固成は「しゅりこせい」と読みます。

『古事記』の国生みでは、別天神(ことあまつかみ)が伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)へ、漂っている国土を整え、固め、完成させるよう命じます。

本来は、未完成の国を整える創造の言葉です。

ドラマでは、ヒルコを名乗る直毘がこの言葉を使いました。しかし、直毘の修理固成は、既存の神々と自分が不要と判断した人間を排除し、選ばれた人間だけで世界を作り直す計画でした。

同じ言葉でも、神話では世界を生み整える使命、ドラマでは過激な選別と再編成を表しています。

ヒルコとは

ドラマでヒルコを名乗って一連の事件を計画したのは、直毘吉道です。その正体は、飛鳥時代から生きる人間・役小角(えんのおづぬ)でした。

直毘は神の生まれ変わりではありません。厳しい修行によって神通力や事戸渡しの力を身につけ、人魚の肉を食べて長い年月を生きてきた人間です。

ヒルコの名は、日本神話の蛭児(ひるこ)に由来すると考えられます。蛭児は伊邪那岐命と伊邪那美命の間に最初に生まれ、葦の船で流された神です。

直毘が倒れた後、二宮のの子(にのみや・ののこ)が葦の船を編み、直毘に似た思想を口にして姿を消しました。そのため、ヒルコという名前が一人の黒幕だけを指すのか、思想や役割として受け継がれるのかは、まだ解決していません。

選別とは

選別は、ヒルコが「残す価値のある人間」と「不要な人間」を分けようとした計画です。

寿正(ことぶき・ただし)が開発したSNSや不老不死をうたう薬を利用し、人々の欲望や行動を試しました。直毘は神々を排除するとともに、人間の中から自分の考えに合う者を選び、新しい世界の構成員にしようとします。

しかし、興玉は人間を優劣で選別することを拒みました。人間が愚かであっても、何度裏切られても、守り続けるのが神だと考えたためです。

この「選別する者」と「信じ続ける者」の対立が、最終回の中心でした。

呼び寄せる力とは

小夢は天宇受売命として、必要とする相手を自分のもとへ呼び寄せる力を持っていました。

ドラマ序盤でも、小夢が会いたい人物や事件に必要な人物と、偶然とは思えない形で出会う場面があります。後半になって、それが天宇受売命の神通力だったと分かります。

天宇受売命は神話の天孫降臨で、道を照らして待っていた猿田毘古神に名を尋ね、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)の一行を導く役割を果たしました。人と人、神と神を引き合わせる性質が、ドラマでは「呼び寄せる力」として表現されています。

映画開始時の小夢は事戸渡しによって神通力を失っています。それでも興玉と再会するなら、能力がなくても二人が引き寄せられるのかが見どころになります。

善意と悪意を見る力とは

現在の興玉神は、人から漏れ出す善意と悪意を見分ける神通力を持っています。

この力は心を完全に読む能力ではありません。相手が善意を抱いているか、悪意を隠しているかを見極め、事件の背後にある感情を判断する力です。

興玉は人間の悪意を誰よりも見てきました。それでも人間を守ることをやめません。この点が、人間に失望して選別を始めた直毘との大きな違いです。

映画前に確認したい設定Q&A

神は死なない?

肉体は死にます。ただし通常の死なら魂が残り、やがて別の人間として転生します。

神が人間に殺されたら?

約100年間は生まれ変われませんが、神の魂が永久に消えるわけではありません。

神隠しに遭った神は戻れる?

事戸渡しで記憶と力を消された後に肉体も殺されたため、基本的には戻れないと説明されています。

小夢は現在も神?

天宇受売命の魂を持つ人物ですが、最終回で事戸渡しを受け、神としての記憶と神通力を失っています。映画で戻れるかが重要な焦点です。

直毘は神?

神ではなく、人魚の肉によって長寿を得た人間・役小角です。修行で神通力を身につけました。

二宮はヒルコ?

当初はお札で操られていました。ラストで新たなヒルコになった可能性はありますが、確定していません。

映画にはどの神が登場する?

最高神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)の登場が発表されています。ほかの新しい神は続報待ちです。

まとめ

ドラマ『全領域異常解決室』で最も重要な設定は、神が人間として何度も転生しながら世界の秩序を守っていることです。

通常の死なら神の魂は次の肉体へ移ります。人間に殺された場合も約100年は戻れませんが、魂は残ります。しかし、事戸渡しによって神の記憶と神通力を失った状態で肉体が死ぬと、その神は永久に消えてしまいます。

ヒルコの神隠しは、この仕組みを利用した殺神事件でした。そして最終回では、小夢も事戸渡しを受け、天宇受売命としての記憶を失っています。

映画はドラマ最終回から2年後を描きます。小夢が神として戻れるのか、興玉と再び絆を築けるのか、失われた神々によって世界にどのような影響が出るのかが重要になります。

用語と設定を押さえたうえでドラマを見直すと、序盤の何気ない会話や「神隠し」という言葉にも、初見とは違う意味が見えてくるはずです。