Netflixシリーズ『ダウンタイム』では、松岡茉優さん演じる形成外科医・沼田文と、仲里依紗さん演じる美容外科医・遠山凜が対立します。
形成外科と美容外科は、どちらも外見に関係する手術を行いますが、治療する目的や保険適用の考え方が異なります。
さらに、名前の似ている「整形外科」は、骨や関節、筋肉などを主に治療する別の診療科です。
3つの違いと、それがドラマの物語にどう関係するのかを解説します。
形成外科・美容外科・整形外科の違い
主な違いを整理すると、次のようになります。
| 診療科 | 主な目的 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 形成外科 | 身体表面の異常や欠損を治し、機能と形態を回復させる | 傷、やけど、先天異常、変形、傷痕、再建など |
| 美容外科 | 本人の希望に応じ、外見をより美しく整える | 二重形成、鼻の整形、フェイスリフト、脂肪吸引など |
| 整形外科 | 運動器の機能を治療・改善する | 骨、関節、筋肉、靱帯、神経、背骨など |
扱う部位が重なる場合もありますが、基本的には「何を目的として治療するか」が異なります。
形成外科とは
形成外科は、身体表面に生じた異常、変形、欠損などを治療し、機能と見た目の両方を改善する診療科です。
治療対象には、次のようなものがあります。
- 顔や手足のけが
- やけど
- 傷痕や引きつれ
- 生まれつきの形態異常
- 皮膚や皮下組織の腫瘍
- がん手術後の乳房や頭頸部の再建
- 切断された指などの再接着
- 眼瞼下垂
- 褥瘡
形成外科では、病気やけがを治すだけでなく、手術後の外見や生活の質も重視します。
例えば、顔にできた傷を縫合する場合、傷を閉じるだけでなく、できる限り傷痕が目立たないように治療することも形成外科の役割です。
美容外科とは
美容外科は、病気やけがの治療ではなく、本人が希望する外見へ近づけることを主な目的とする診療分野です。
代表的な施術には、次のようなものがあります。
- 二重まぶたの形成
- 鼻の形を整える手術
- フェイスリフト
- 脂肪吸引
- 豊胸
- 輪郭形成
- しわやたるみの改善
美容外科は、形成外科の技術を基礎とする分野です。一方で、美容を目的とする治療は原則として自由診療となり、料金は医療機関ごとに設定されます。
美容上の希望が中心でも、施術でメスや麻酔、医療機器を使用する以上、美容外科も医療です。出血、感染、神経障害などが起こる可能性があり、安全管理や合併症への対応が求められます。
形成外科と美容外科は何が違う?
両者の大きな違いは、治療の出発点です。
形成外科は、病気、けが、生まれつきの異常などによって生じた問題を、できる限り正常な状態へ近づけます。
美容外科は、病気とはみなされない状態から、本人が希望する外見へ整えることを目的とします。
例えば、まぶたの手術でも目的によって診療の扱いが変わります。
- まぶたが下がり、視野に支障がある眼瞼下垂の治療:形成外科
- 外見を変えるための二重まぶた形成:美容外科
乳房の手術も同様です。
- 乳がん手術後に乳房を再建する:形成外科
- 美容目的で乳房の大きさや形を変える:美容外科
症状や治療目的によっては、形成外科でも自由診療になったり、美容面に配慮した治療が保険適用になったりするため、単純に「形成外科は保険、美容外科は自費」だけで区別できないケースもあります。
整形外科は何を治療する?
整形外科は、骨、関節、筋肉、靱帯、腱、神経などからなる「運動器」を治療する診療科です。
主な対象は次のとおりです。
- 骨折や脱臼
- 腰痛
- 椎間板ヘルニア
- 膝や肩の関節疾患
- スポーツによるけが
- 骨粗しょう症
- 手足のしびれ
- リウマチ
- 骨や軟部組織の腫瘍
「整形」という名前から美容整形を行う診療科と思われることがありますが、整形外科は美容外科とは異なります。
日本整形外科学会も、整形外科は骨格系、筋肉、神経系からなる運動器の機能改善を重視する診療科と説明しています。
『ダウンタイム』の沼田文は形成外科医
松岡茉優さんが演じる沼田文は、大学病院に勤務していた形成外科医です。
文は「医療で命を救う」ことを信条とし、美容外科に対して否定的な考えを持っていました。
しかし、自身が行った緊急手術をきっかけに大学病院を去り、遠山凜から誘われて美容外科の世界へ入ります。
形成外科医には、細かな血管や神経を扱う手術、傷を目立たなくする縫合、失われた組織を再建する技術などが求められます。文の優れた手術技術が、美容外科でも注目されるという設定には、診療分野としてのつながりがあります。
遠山凜はカリスマ美容外科医
仲里依紗さんが演じる遠山凜は、業界最大手の遠山美容外科クリニックを率いる美容外科医です。
凜が掲げる信条は「美で人を救う」こと。
文が病気やけがを治すことを医療の中心と考えるのに対し、凜は外見の悩みを解消することも人を救う行為だと考えています。
2人の対立は、単なるライバル関係ではありません。
- 病気ではない人へメスを入れることは医療なのか
- 外見が変わることで人は救われるのか
- 患者の希望をどこまで受け入れるべきか
- 医療と商売の境界はどこにあるのか
こうした形成外科と美容外科の価値観の違いが、物語の中心になります。
沼田文は美容外科医になるのか
公式のあらすじでは、文は大学病院を去った後、美容医療の世界へ転身すると説明されています。
一方で、文が形成外科医としての考え方を捨て、完全に美容外科医へ変わるという意味ではありません。
美容外科を否定してきた文が、凜の治療によって救われる患者を目の当たりにし、自分の医療観を揺さぶられていくことが物語の軸です。
文が最終的に美容外科をどう受け止めるのかは、配信前には明らかにされていません。
まとめ
『ダウンタイム』に登場する3つの診療科は、次のように区別できます。
- 形成外科:病気やけがなどによる外見・機能の問題を治療する
- 美容外科:本人の希望に応じて外見を整える
- 整形外科:骨、関節、筋肉などの運動器を治療する
沼田文が形成外科医、遠山凜が美容外科医であることは、2人の価値観の違いを示す重要な設定です。
文は「命を救う医療」、凜は「美によって人を救う医療」を信じています。どちらか一方を単純な正義や悪として描くのではなく、医療と美の境界を問いかけるのが本作の大きな見どころです。