映画『バックルームズ』を見て、「この不気味な空間には元ネタがあるの?」「実際に語られている都市伝説なの?」と気になった人も多いのではないでしょうか。
『バックルームズ』の原点は、小説やゲームではありません。2019年に海外の匿名掲示板へ投稿された、黄色い壁の部屋を写した一枚の画像と、それに添えられた短い文章から生まれたインターネット都市伝説です。
その後、世界中のユーザーが設定を付け加え、ゲームや動画へと発展。映像クリエイターのケイン・パーソンズが制作したYouTube作品を経て、アメリカの映画製作・配給会社A24(エートゥエンティフォー)による長編映画へつながりました。
この記事では、バックルームズという都市伝説の始まり、元画像が撮影された場所、後から加わった設定、映画版との関係を整理します。
※この記事は2026年9月時点の公開情報をもとにしています。
映画『バックルームズ』には元ネタの都市伝説がある
映画『バックルームズ』には、インターネット上で広まった「The Backrooms」という都市伝説があります。
ただし、昔から特定の地域で語り継がれてきた伝説ではありません。海外掲示板から生まれ、多数のユーザーによって設定が追加されていった現代的なネット怪談です。
バックルームズは、おおむね次のような空間として語られています。
- 現実世界の裏側に存在する
- 黄色い壁と湿ったカーペットが延々と続く
- 蛍光灯の音だけが聞こえる
- 部屋と廊下が不自然につながっている
- 一度迷い込むと出口が分からない
- 人のために造られたように見えるのに誰もいない
見慣れているようで、どこかがおかしい。その説明しにくい違和感が、バックルームズの怖さの中心です。
映画はこの都市伝説と、ケイン・パーソンズがYouTubeで展開した映像シリーズを基礎に制作されています。
都市伝説の始まりは2019年の4chan
バックルームズが広まるきっかけになったのは、2019年5月12日に海外の匿名掲示板「4chan」の超常現象を扱う掲示板へ投稿された画像です。
スレッドでは、見ていると落ち着かない、不自然さを感じる画像が募集されていました。その中に、黄色い壁紙、蛍光灯、何も置かれていない部屋を写した写真が投稿されます。
別の匿名ユーザーがこの画像に対して、現実から誤って外れてしまうと、湿ったカーペットと黄色い壁が続く「バックルームズ」へ落ちるという趣旨の文章を付けました。
この短い説明が、現在知られている都市伝説の原型です。
最初から壮大な物語が用意されていたわけではありません。一枚の写真と短い文章を見た人々が、「この奥には何があるのか」「迷い込んだらどうなるのか」と想像し、世界観を広げていきました。
「ノークリップして迷い込む」とはどういう意味?
バックルームズの説明には、「現実からノークリップする」という言葉がよく登場します。
ノークリップとは、もともとコンピューターゲームで、壁や床などの当たり判定を無視して通り抜ける状態を表す言葉です。
ゲームの不具合や特殊な操作によって、キャラクターが壁を抜け、通常は入れない裏側の空間へ落ちることがあります。この感覚を現実世界へ置き換えたのが、バックルームズの基本的な発想です。
たとえば、床の一部だけ当たり判定がなくなったかのように、突然現実の裏側へ落ちてしまう。その先に広がっているのが、出口の見つからない黄色い部屋というわけです。
もちろん、現実の壁や床からバックルームズへ移動できるという科学的根拠はありません。あくまでゲーム用語を利用した創作上の設定です。
元画像はCGではなく実在する建物の写真
バックルームズの元画像は、CGや生成AIで作られたものではありません。
長い間、撮影場所や画像の出所は不明でしたが、2024年にインターネット上の調査コミュニティによって、元の掲載ページが発見されました。
撮影場所は、アメリカ・ウィスコンシン州オシュコシュにあった家具店跡の建物です。その建物には後に、模型や玩具などを扱う「HobbyTown」の店舗が入りました。
元画像は、建物の2階をラジコンカー用サーキット「Revolution Raceway」へ改装する過程で撮影された写真の一つでした。
記録によると、写真は2002年6月12日に撮影され、2003年3月に改装の様子を紹介する店舗サイトへ掲載されています。
つまり、写真に写っている部屋自体は実在していました。しかし、異次元へつながる迷宮だったわけではありません。
元ページは現在の通常サイトではなく、Internet Archiveに保存された過去のページから確認できます。
なぜ普通の部屋がこれほど不気味に見えるのか
元画像には、怪物も血痕もありません。それでも多くの人が不安や恐怖を感じます。
その理由として挙げられるのが、「リミナルスペース」という考え方です。
リミナルには、境界や移行途中という意味があります。リミナルスペースは、日常的な場所でありながら、人や物が消えることで本来の役割を失ったように見える空間を指します。
代表的な例は次のとおりです。
- 閉店後のショッピングモール
- 誰もいない学校の廊下
- 深夜のホテル
- 営業時間外の遊園地
- 空になった事務所
- 出口の見えない地下通路
普段なら人がいるはずなのに誰もいないため、見る側は「何かがおかしい」と感じます。
バックルームズの元画像も、壁紙や蛍光灯は見慣れたものですが、窓、家具、人、明確な出口がありません。部屋の目的が分からないことが、説明しにくい不安を生んでいます。
レベルや怪物は最初から存在したわけではない
現在のバックルームズについて調べると、Level 0、Level 1といった階層や、エンティティと呼ばれる怪物が多数紹介されています。
しかし、これらの大部分は最初の画像投稿に含まれていた設定ではありません。
最初に語られたのは、黄色い壁、湿ったカーペット、蛍光灯の音、果てしなく続く部屋など、ごく限られた内容でした。
その後、ファンによる共同創作サイトや掲示板で、次のような要素が追加されています。
- 性質の異なる多数の階層
- 空間に潜む生物や怪物
- 迷い込んだ人々の集団
- 安全な場所や危険度
- 特殊な食料や道具
- 階層間を移動する方法
- 現実へ帰るための条件
バックルームズには、すべての作品に共通する一つの公式設定があるわけではありません。
共同創作サイト、動画シリーズ、ゲームは、それぞれ異なる世界観を採用しています。「Level 0からLevel 999までが公式」「特定の怪物が必ず映画にも登場する」とは限らない点に注意が必要です。
バックルームズはゲームが元ネタではない
バックルームズをゲームで知った人も多いため、「ゲームの世界を映画化した」と思われることがあります。
しかし、発生した順番は次のとおりです。
- 実在する建物で元画像が撮影される
- 2019年に4chanへ画像と怪談が投稿される
- ネット上で共同創作の設定が広がる
- 複数のクリエイターがゲーム化する
- ケイン・パーソンズがYouTube動画を制作する
- パーソンズ版を基礎に長編映画化される
特定の原作ゲームが一本存在するわけではなく、多数のゲームが同じ都市伝説から派生しています。
そのため、映画を見る前に特定のゲームをクリアしておく必要もありません。
ケイン・パーソンズ版は独自の物語
バックルームズを映像作品として世界的に広めたのが、Kane Pixelsの名前で活動するケイン・パーソンズです。
パーソンズは2022年1月、当時16歳で約9分の短編動画「The Backrooms(Found Footage)」をYouTubeへ投稿しました。
古いビデオカメラで撮影された記録映像のような形式で、撮影者が突然黄色い部屋へ落ち、正体不明の存在に追われる様子が描かれています。
その後の動画では、バックルームズを調査する架空の研究組織や、実験によって空間への入口が生まれた可能性など、独自の物語が展開されました。
これらは共同創作サイトに掲載されたすべての階層や怪物を映像化したものではありません。パーソンズが都市伝説の基本的な発想を使い、新しく構築した世界です。
映画版はどの設定を元にしている?
長編映画『バックルームズ』は、4chan発の都市伝説を直接そのまま映画化したというより、パーソンズが制作したYouTubeシリーズを長編作品へ発展させたものです。
したがって、映画の元ネタは次の二段階に分けて考えると分かりやすくなります。
| 段階 | 映画との関係 |
|---|---|
| 4chan発の都市伝説 | 黄色い部屋や現実の裏側へ落ちる基本発想 |
| ケイン・パーソンズ版 | 映像表現や独自世界観など、映画の直接的な基礎 |
一方、ファンWikiに掲載された膨大なレベルやエンティティが、すべて映画版の設定として採用されているわけではありません。
映画を見てからファンWikiを読むと内容が食い違って見えるのは、それぞれが別の世界観を展開しているためです。
バックルームズは本当にある?
バックルームズという異次元空間が実在すると示す証拠はなく、都市伝説として作られたフィクションです。
元画像の部屋は実在しましたが、写っていたのは改装中の建物内部です。写真が実在することと、画像に付けられた怪談が事実であることは別です。
また、SNSには「バックルームズへ行く方法」や「現実でノークリップした映像」と称する投稿がありますが、創作、演出、CG、ゲーム画面などが含まれています。
バックルームズが現実味を持って感じられるのは、完全な異世界ではなく、「どこかで見たような普通の場所」を題材にしているからでしょう。
まとめ
映画『バックルームズ』の元ネタは、2019年に4chanへ投稿された一枚の画像と短い文章から始まったインターネット都市伝説です。
元画像はCGではなく、米国ウィスコンシン州にあった建物の改装中の写真でした。しかし、そこが本当に異次元へつながっていたわけではありません。
その後、多数のユーザーが階層や怪物などを追加し、複数のゲームや動画が誕生しました。ケイン・パーソンズは基本的な発想を使って独自のYouTubeシリーズを制作し、その世界を長編映画へ発展させています。
バックルームズを理解するときは、「最初の都市伝説」「ファンによる共同創作」「ケイン版」「映画版」を分けて考えることが大切です。それぞれの違いを知っておけば、映画の世界観もより深く楽しめるでしょう。