ドラマ『全領域異常解決室』の中心人物である興玉雅と雨野小夢。
物語の前半では、興玉は超常現象に詳しい全決の室長代理、小夢は突然全決へ出向してきた人間の警察官として描かれていました。
しかし物語が進むと、2人の正体が日本神話に登場する神であることが明らかになります。
- 興玉雅(藤原竜也)の本当の正体:天石戸別神(あめのいわとのわけのかみ)
- 雨野小夢(広瀬アリス)の正体:天宇受売命(あめのうずめのみこと)
どちらも「天岩戸」に関係する神様ですが、ドラマで描かれた2人の恋愛や何千年にもわたる絆が、そのまま日本神話に書かれているわけではありません。
また、小夢=天宇受売命には、芹田正彦の正体である猿田毘古神(さるたびこのかみ)との深いつながりもあります。
この記事では、興玉雅と雨野小夢の正体、ドラマでの能力、日本神話の天岩戸伝説、2人と猿田毘古神の関係を解説します。
※ここからはドラマ最終回までの重要なネタバレを含みます。
興玉雅と雨野小夢の正体
最初に、ドラマで明らかになった2人の正体を整理します。
| 登場人物 | 神としての正体 | ドラマでの特徴 |
|---|---|---|
| 興玉雅(藤原竜也) | 天石戸別神(あめのいわとのわけのかみ) | 神に事戸渡しを行い、黄泉へ送る |
| 雨野小夢(広瀬アリス) | 天宇受売命(あめのうずめのみこと) | 踊りや指の動きで神の力を発揮する |
興玉は当初、自分を興玉神(おきたまのかみ)と説明していました。
一方、小夢は神としての記憶を失っていたため、自分を普通の人間だと思っています。第6話まで、視聴者にも小夢が神であることは伏せられていました。
興玉雅は最初「興玉神」と名乗っていた
第5話の終盤で、興玉雅は興玉神(おきたまのかみ)であることが明かされます。
ドラマ内の興玉神は、人間から漏れ出す善意と悪意を見分ける能力を持つ神です。
興玉神は実際に信仰されている神様で、三重県伊勢市の二見興玉神社がよく知られています。二見興玉神社では、猿田彦大神(さるたひこおおかみ)ゆかりの霊石「興玉神石」を御神体として興玉大神(おきたまのおおかみ)が祀られています。
そのためドラマ序盤では、興玉雅も芹田正彦と同じく、猿田毘古神と関係する神ではないかと予想されていました。
しかし、興玉神は興玉が本当の正体を隠すための表向きの身分でした。
興玉雅の本当の正体は天石戸別神
興玉雅の本当の正体は、天石戸別神(あめのいわとのわけのかみ)です。
第8話では、月読命(つくよみのみこと)である佃未世が、興玉の正体を突き止めます。そして第9話で、興玉自身が全決の仲間へ真実を打ち明けました。
天石戸別神は、御門や神域の入口を守る神とされています。
表記には、天石門別神(あめのいわとわけのかみ)、天石戸別神、天石門別命(あめのいわとわけのみこと)などがあります。古典や神社によって同名・類似名の神の説明が異なるため、すべてを一柱の神として単純にまとめることはできません。
ドラマでは「天石戸別神」という表記が使われ、神々を黄泉へ送る特別な存在として設定されています。
天石戸別神はどんな神様?
「石戸」や「石門」という名前から、天石戸別神は天岩戸の戸や、神聖な場所の門を守る神と結びつけて説明されることがあります。
また、『古語拾遺』では櫛石窓神(くしいわまどのかみ)と豊石窓神(とよいわまどのかみ)が御門を守る神として登場し、天石門別神の別名・関連神とされる場合があります。
ただし、日本神話の天岩戸伝説で、天石戸別神が天宇受売命と一緒に何かをしたという詳しい物語が描かれているわけではありません。
ドラマでは、
- 神と人間の世界の境界を守る
- 寿命を迎えた神を黄泉へ送る
- 神の記憶を消す「事戸渡し」を行う
- 天石戸別神が消えると神々の世界に大きな影響が出る
という独自の役割が加えられています。
門や境界を守る神という性質を、「生と死の境界を管理する神」へ発展させた設定と考えると分かりやすいでしょう。
興玉はなぜ正体を隠していた?
興玉が天石戸別神であることを隠していた理由は、神々から恐れられる存在だったためです。
神は人間の肉体へ魂を移しながら、何度も転生します。しかし、すべての神が永遠に転生を続けられるわけではありません。
寿命を迎えた神に事戸渡しを行い、黄泉へ送るのが天石戸別神の役目です。
事戸渡しを受けた神に関する記憶は周囲から失われるため、仲間にとって興玉は、自分や大切な神とのつながりを消す可能性がある存在でもあります。
さらにヒルコは、神々の秩序を崩すために天石戸別神を探していました。
興玉は仲間から距離を置かれないため、そしてヒルコに正体を知られないため、興玉神として活動していたのです。
雨野小夢の正体は天宇受売命
雨野小夢の正体は、天宇受売命(あめのうずめのみこと)です。
天宇受売命は、天鈿女命、天宇受賣命などと表記されることもあります。
日本神話では、踊りと機転によって世界へ光を取り戻した女神として有名です。現在では、芸能、舞踊、俳優、神楽などの祖神として信仰されています。
ドラマで小夢が警視庁音楽隊カラーガード出身で、ダンスを得意としていたことも、天宇受売命の性質を受け継いだ設定です。
名前も、「雨野小夢(あまの・こゆめ)」と「天宇受売(あめの・うずめ)」で、音が似ています。
天宇受売命で有名な天岩戸伝説
天宇受売命の最も有名な伝説が、天岩戸の物語です。
太陽神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)は、弟の須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴な行いを受け、天岩戸へ隠れてしまいます。
太陽を司る天照大御神が姿を消したことで、高天原も地上も暗闇に包まれ、さまざまな災いが起こりました。
八百万の神々は天安河原へ集まり、天照大御神を外へ連れ出す方法を相談します。
そこで天宇受売命は、岩戸の前に桶を伏せ、その上で踊りました。周囲の神々が大きく笑ったため、天照大御神は外の様子が気になり、岩戸を少し開きます。
天宇受売命は、天照大御神より尊い神が現れたため、皆で喜んでいると答えました。
用意されていた鏡に自分の姿が映り、天照大御神がさらに岩戸を開けると、天手力男神(あめのたぢからおのかみ)が外へ引き出します。
こうして世界に光が戻りました。
天宇受売命は力ずくで岩戸を開けたのではなく、踊り、笑い、機転によって状況を変えた神です。
天岩戸伝説は、神社本庁の公式サイトでも分かりやすく紹介されています。
小夢の能力は天宇受売命の踊りが由来?
ドラマの小夢は、鈴を鳴らしながら指を独特な形に動かし、人や神を「呼び出す」ような力を発揮します。
第7話で描かれた過去では、全決の室長だった小夢が、離れた場所にいる人物を自分のもとへ呼び寄せました。
最終回では、直毘吉道の呪符に意識を奪われた興玉へ鈴の音と声を届け、天石戸別神としての意識を呼び戻します。
日本神話の天宇受売命には、ドラマと同じ指の形で人を呼び出す能力が記されているわけではありません。
しかし、天岩戸に隠れた天照大御神を踊りによって外へ導いた伝説を、「隠れた本来の姿を呼び戻す力」としてドラマ向けに表現した可能性があります。
小夢はなぜ神の記憶を失っていた?
小夢は第1話の時点で、天宇受売命としての記憶を失っていました。
4カ月前、天宇受売命だった小夢は、ヒルコに神器・天之加久矢(あめのかくや)で襲われます。
ヒルコの狙いは、小夢から興玉の本当の正体を聞き出すことでした。
小夢は興玉を守るため、自分自身に事戸渡しを行います。興玉が天石戸別神であることを含め、神としての記憶を自ら消したのです。
その後、人間として生きる小夢が再び全決へ出向してきました。
記憶を失っても小夢が興玉や全決のもとへ戻ったことは、2人の長い縁を象徴しています。
興玉と小夢は昔から恋人だった?
ドラマでは、興玉と小夢が何千年もの間、転生を繰り返しながら深い絆を結んできたことが示されています。
直毘も、小夢が自分を犠牲にして興玉を守った行動には、愛情があったのではないかと指摘しました。
興玉も小夢の記憶が戻らないと知って涙を流し、最終的には組織の規則を破るような形で小夢の記憶を残そうとします。
2人が互いを大切に思っていることは間違いありません。
ただし、日本神話に「天石戸別神と天宇受売命が恋人だった」という有名な伝説はありません。
興玉と小夢の何千年にもわたる関係は、日本神話の神々を下敷きにしたドラマ独自の物語です。
天宇受売命と猿田毘古神の関係
日本神話で天宇受売命と深い関係を持つのは、天石戸別神よりも猿田毘古神(さるたびこのかみ)です。
猿田毘古神は、天孫降臨の際、天上から地上へ降りる瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)一行の前に現れた神です。
その異様な姿にほかの神々が近づけない中、天宇受売命が猿田毘古神のもとへ行き、何者なのかを尋ねました。
猿田毘古神は一行を地上へ案内し、その後、天宇受売命とともに伊勢へ向かったと伝えられています。
現在では2柱を夫婦神として祀る神社もあり、猿田彦神社の公式サイトでも、猿田彦大神が瓊瓊杵尊を案内したあと、天宇受売命と一緒に伊勢へ戻ったと紹介されています。
ただし、『古事記』本文に現代的な意味で「2柱が結婚した」と明記されているわけではなく、伝承や信仰上の説明には違いがあります。
芹田が小夢を大切にしていた理由
ドラマで猿田毘古神として転生していたのが、迫田孝也さん演じる芹田正彦です。
芹田は小夢が全決へ戻ってきたときから、彼女を特別に気にかけていました。
小夢が自分の正体を思い出して芹田へ話しかけた際も、芹田は天宇受売命との再会を喜びます。
芹田が小夢を大切にするのは、日本神話や後世の信仰で、猿田毘古神と天宇受売命が伴侶として結びつけられているためです。
一方、ドラマの小夢は、興玉とも何千年にもわたる深い関係を築いています。
神話上の関係をそのまま再現するのではなく、転生する神々が長い時間の中で複雑な絆を作ってきたという、ドラマ独自の設定になっています。
興玉と小夢の名前にも正体のヒントがある
2人の名前には、それぞれ神としての正体につながる言葉が隠されています。
興玉雅
「興玉」は、興玉神や二見興玉神社を連想させます。
また「雅」という名前は、雨野小夢の正体を隠すためのミスリードとして、天宇受売命の別名や芸能の神らしい優雅さを意識した可能性も考えられます。
ただし、名前の「雅」が特定の神名を示すとは、ドラマ内で明言されていません。
雨野小夢
「雨野小夢(あまのこゆめ)」は、「天宇受売(あめのうずめ)」と音がよく似ています。
さらに小夢がカラーガード出身で、鈴や踊りを使うことも、天宇受売命の正体を示す伏線でした。
最終回で興玉は小夢の記憶を残した?
ヒルコ事件の解決後、人間となっている小夢は、神々の存在を知ったため記憶を消されることになります。
興玉は小夢の頭へ指を当てて事戸渡しを行いますが、周囲に気づかれないよう、人差し指だけを離していました。
事戸渡しを意図的に完成させず、小夢の記憶を残した可能性が高いでしょう。
その後、小夢と興玉は道ですれ違います。小夢は全決へ入る際に使っていた鈴を持ち、すれ違ったあとには鈴の音が響きました。
小夢がどこまで覚えているのかは明かされていませんが、興玉との関係が完全に消えていないことを示す結末です。
映画で興玉と小夢はどうなる?
映画1作目は、ドラマ最終回から2年後が舞台です。
公式発表では、興玉と小夢は別々の道を歩み始めているものの、新たな事件によって再び運命を交錯させると説明されています。
注目したいのは、次の点です。
- 小夢は興玉や全決を覚えているのか
- 天宇受売命としての力を取り戻しているのか
- 興玉はなぜ小夢から離れたのか
- 2人の何千年にもわたる関係が明かされるのか
- 天照大御神の登場によって天岩戸との関係が描かれるのか
映画2作目には、天岩戸神話の中心となる天照大御神が登場します。
天石戸別神である興玉、天宇受売命である小夢、そして天照大御神がそろうことで、ドラマ以上に天岩戸伝説を意識した展開になる可能性があります。
まとめ
興玉雅の本当の正体は天石戸別神、雨野小夢の正体は天宇受売命です。
天石戸別神は御門や境界を守る神とされ、ドラマでは神に事戸渡しを行い、黄泉へ送る特別な役目を与えられています。
天宇受売命は、天岩戸の前で踊り、天照大御神を外へ導いた芸能の神です。小夢のダンス、鈴、呼び出す力は、この伝説をもとにした設定と考えられます。
ただし、天石戸別神と天宇受売命が恋人だったという神話はありません。興玉と小夢の何千年にもわたる絆は、ドラマ独自の物語です。
日本神話で天宇受売命と深い関係を持つのは猿田毘古神で、ドラマでは芹田正彦として登場しています。
映画では、別々の道を歩んだ興玉と小夢が再会し、さらに天照大御神も登場します。3柱と天岩戸神話の関係を知っておくと、映画の物語をより深く楽しめそうです。
※映画『全領域異常解決室』は2027年春に2作連続公開予定です。最新情報は公式サイトでご確認ください。