『インターステラー』のブラックホール描写は科学的に正しいのか?

クリストファー・ノーラン監督の映画『インターステラー』(2014)は、圧倒的な映像美とリアルな科学描写で知られています。

特にブラックホール「ガルガンチュア」の映像は、公開当時から「史上最も科学的に正確なブラックホール」と話題になりました。

では実際に、どこまで科学的に正しかったのでしょうか?

『インターステラー』基本情報

公開年2014年
製作国アメリカ・イギリス合作
監督クリストファー・ノーラン
脚本ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
出演者マシュー・マコノヒー(クーパー役)
アン・ハサウェイ(アメリア・ブランド博士役)
ジェシカ・チャステイン(マーフ役/成長後)
マッケンジー・フォイ(マーフ役/幼少期)
マイケル・ケイン(ブランド教授役)
マット・デイモン(マン博士役)
上映時間169分

ブラックホール「ガルガンチュア」の描写

映画に登場するブラックホールは、巨大な質量を持つ超大質量ブラックホールです。

特徴的なのは、ブラックホールの周囲に輝く「降着円盤」が歪んで見えるビジュアル。

これは、ブラックホールの強力な重力で光が曲げられる「重力レンズ効果」によって生まれる現象です。

観客の多くが「まるで非現実的な絵画」と感じたこの映像こそ、実際の物理学に基づいたものだったのです。

※画像はイメージです。

科学的裏付け

この映像を監修したのは、ノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者 キップ・ソーン博士

彼はブラックホールの重力場をシミュレーションするための数式を提供し、それをCG制作チームが忠実に再現しました。

結果として、「ブラックホールを横から見ると、降着円盤の裏側までもが見えてしまう」という、理論的に予測されていた光学現象を初めて映像化することに成功しました。

このシーンは映画公開後、科学雑誌 ScienceNature にも取り上げられ、実際に研究者が「観測可能なブラックホール像」の参考にしたほどです。

科学的に正しい点

  • 重力レンズ効果
    光が曲げられることで、円盤が上下に広がって見える描写
  • 時間の遅れ(ウラシュ星のシーン)
    ブラックホール近傍の強い重力による「重力時間遅延」を表現
  • 降着円盤の輝き
    物質が超高速で落ち込む際に発生する高温ガスの光

これらは現代の物理学に基づいた正しい描写です。

まとめ

『インターステラー』は、ハリウッド映画としては異例のレベルで科学的に正確なブラックホールを描きました。

キップ・ソーン博士の監修により、「理論物理学でしか存在しなかったブラックホール像」をスクリーンに映し出し、多くの人に宇宙物理学への関心を呼び起こしました。

つまり、この映画はSFでありながら「科学リテラシーを刺激する教材」としての側面も持っているのです。