『LOGAN/ローガン』(2017年)は、マーベル・コミックのキャラクター、ウルヴァリンを主人公にした映画で、ヒュー・ジャックマンが演じるローガンの最後の物語です。
スーパーヒーロー映画でありながら、深い人間ドラマや家族の絆、自己犠牲をテーマにしており、重厚なストーリー展開とキャラクターの内面描写が特徴です。
基本情報
監督 | ジェームズ・マンゴールド |
主要キャスト | ヒュー・ジャックマン(ローガン / ウルヴァリン役) パトリック・スチュワート(チャールズ・エグゼビア役) ダフネ・キーン(ローラ / X-23役) スティーヴン・マーチャント(カリバン役) |
公開年 | 2017年 |
製作費 | 約9,700万ドル |
興行収入 | 約6億1,900万ドル |
配信サービス | Disney+ ※Disney+以外もアプリ内課金にて配信多数有り |
前提知識
X-MENシリーズから引き続き出演しているのは、ヒュー・ジャックマン(ローガン / ウルヴァリン役)とパトリック・スチュワート(チャールズ・エグゼビア役)のみ。
2人の関係性やこれまでの背景などを知らないとあまり話にのめり込めないので、X-MENとは何か?くらいは知っておく必要があると思います。
最低限見ておくべき作品
- X-MEN(2000年)
- ウルヴァリン: X-MEN ZERO(2009年)
余裕があったら見ておくべき作品
- X-MEN 2(2003年)
- X-MEN: ファイナル ディシジョン(2006年)
- ウルヴァリン: SAMURAI(2013年)
- X-MEN: フューチャー&パスト(2014年)
これらの作品を通じて、ローガン(ウルヴァリン)のキャラクターの成り立ちや彼が直面してきた戦い、仲間との関係などを理解することができます。特に、彼の孤独や悩みを描くウルヴァリンシリーズは『LOGAN/ローガン』のテーマと密接に関わっています。
あらすじ
舞台は2029年、ミュータントはほとんど絶滅し、ローガン(ヒュー・ジャックマン)は老いと衰えた体で生きています。彼はリムジンの運転手として働きながら、メキシコ国境付近で隠遁生活を送るチャールズ・エグゼビア(パトリック・スチュワート)を世話しています。エグゼビアは脳の退行性疾患を患っており、かつてのテレパシー能力が制御不能になりつつあります。
ある日、ローガンはガブリエラという女性から助けを求められます。彼女はローラ(ダフネ・キーン)という少女を連れており、彼女を「エデン」と呼ばれる安全な場所に連れて行ってほしいと頼みます。ローラは実はローガンの遺伝子で作られたクローンであり、彼女の体には彼と同じ治癒能力とアダマンチウムの爪が備わっています。ローラは悪徳企業「アルカリ・トランジゲン」によって作られた実験体であり、彼女を追っている組織「ライス博士」と「ザンダー・ライス」がローガンたちを追い詰めます。
ローガンとチャールズは、ローラを連れて逃亡を開始します。彼らは互いに徐々に絆を深め、ローガンはローラを守ろうとします。旅の途中、ローガンたちはケンタッキー州で親切な農家のファミリーと出会います。この家族は、ローガンたちを自宅に招き、一晩の安息を提供します。チャールズは、この家族と過ごす時間をとても大切にし、特にローラに対して「これが家族というものだ」と教えます。
その夜、ローガンとファミリーの父親が外に出かけている間、ローガンのクローンである「X-24」がファミリーの家に忍び込みます。
チャールズは、ローガンだと思って「X-24」に自分の過去の罪を告白します。チャールズは涙を流しながら、仲間と過ごした時間を懐かしむ一方で、かつてウェストチェスターで多くのミュータントを死なせてしまったことへの後悔を語り、自分がどれほど罪深い存在であるかを吐露します。
X-24は、チャールズを冷酷に刺し、彼を致命傷に追い込みます。チャールズは驚きと苦しみの中で息絶えますが、その直前に本物のローガンが戻り、彼を抱きしめます。チャールズはローガンの腕の中で息を引き取り、「今日はとても良い日だった」という言葉を最後に残します。チャールズが感じた一瞬の平和と安らぎはX-24によって残酷に奪われました。
チャールズの死後、ローガンは深い悲しみと怒りに駆られます。彼はX-24との激しい戦いを繰り広げますが、体力も治癒能力も衰えているため、完全には勝利できませんでした。
ローガンはチャールズを埋葬し、簡素な墓を作ります。その後も、ローガンはローラを守るため、再び旅を続けますが、チャールズの死は彼に大きな精神的打撃を与え、彼の心に深い影を落とします。
彼らは最終的に「エデン」と呼ばれる場所に到達します。ここは、逃亡してきた若いミュータントたちが集まる安全な場所でした。しかし、彼らを追ってきたライス博士率いる組織との最後の戦いが始まります。ローガンは最後の力を振り絞り、若いミュータントたちを守るために戦いますが、肉体の限界が迫り、重傷を負います。
戦いの最中、ローガンは自分のクローンである「X-24」との死闘を繰り広げますが、最終的にローラが介入し、X-24を倒します。しかし、ローガンは致命傷を負い、彼の治癒能力も限界に達しています。ローラは、ローガンの死を前に、「お父さん」と呼びかける感動的なシーンが描かれます。ローガンは、自分がこれまで守ってきた家族や仲間たちに思いを馳せながら、静かに息を引き取ります。
映画の最後、ローラと他の若いミュータントたちは、ローガンの墓を作り、彼を弔います。ローラは墓標の十字架を倒してX字(X-MENの象徴)にし、仲間と共に新たな未来へと旅立ちます。ローガンというキャラクターの最後の章を感動的に締めくくり、彼の死が次世代へと希望を繋ぐものとして描かれています。
ミュータントはどうしていなくなった?
『LOGAN/ローガン』(2017年)の世界では、ミュータントはほとんど絶滅してしまっています。その理由は映画の中で明確には説明されていませんが、いくつかの要因が暗示されています。
ミュータントの自然な減少
新しいミュータントが生まれなくなったことが示唆されています。これは、政府や製薬会社がミュータント遺伝子の抑制や根絶を目的とした取り組みを行った可能性があるからです。
製薬会社の陰謀
映画の中で、悪役の組織「アルカリ・トランジゲン」が、ミュータント遺伝子を抑制する食品添加物を開発していたことが明らかになります。これにより、新たなミュータントの誕生が抑えられ、既存のミュータントの力も弱まっていった可能性があります。
チャールズ・エグゼビアの事故
映画では、チャールズ・エグゼビア(プロフェッサーX)がかつて大きな事故を起こし、多くの人々を死傷させたことが暗示されています。この事故がきっかけで、X-MENや他のミュータントの多くが命を落とした可能性があります。事故は彼の脳の退行性疾患によって引き起こされたもので、彼の強力なテレパシー能力が制御不能になった結果です。
チャールズ(プロフェッサーX)は何をした?
『LOGAN/ローガン』(2017年)で暗示されているチャールズ・エグゼビアの事故は、映画のシーンとしては削除されたものの、非常に重要な出来事として語られています。
事故の背景
チャールズ・エグゼビアは、老齢による脳の退行性疾患(おそらくアルツハイマー病)を患っており、その影響で彼のテレパシー能力が制御不能になる場面がありました。この病気は彼の脳を非常に危険な武器に変えてしまい、無意識のうちに大規模な精神波を放出し、周囲の人々に甚大な被害をもたらすことがあります。
事故の内容
映画の中では、約1年前にウェストチェスターでチャールズが事故を起こし、その結果、多くの人が死傷したことが示唆されています。この事故により、X-MENのメンバーを含む多くのミュータントが命を落としました。ウェストチェスターは、X-MENの拠点である「エグゼビア学園」の所在地であるため、そこでの事故がX-MENの終焉を迎えた要因とされています。
事故の影響とその後
この事故が原因で、チャールズ・エグゼビアは非常に危険な存在とみなされ、政府や他の組織から追われる身となりました。そのため、ローガンが彼を保護し、隠遁生活を送っています。ローガンは、チャールズが再び事故を起こさないよう、彼の発作を抑える薬を与えつつ、孤立した場所で彼を世話しています。
チャールズ自身は、この事故についてほとんど記憶がなく、自分が何をしてしまったのかも完全には理解していませんが、映画の終盤で、起こした惨劇を自覚し、深い悲しみと罪悪感に打ちひしがれます。
削除されたシーン
この事故のシーンは元々『LOGAN/ローガン』に含まれる予定だったらしいですが、最終的に削除されました。
監督のジェームズ・マンゴールドと脚本家たちは、映画のテーマやトーンにおいて、直接的な描写よりも暗示やキャラクターの感情を通じて過去を語る方が効果的だと考えました。具体的に何が起きたかを観客が想像する余地を残すことで、ローガンとチャールズの罪悪感や悲しみがより深く感じられるようになっています。
ウルヴァリンの治癒能力はどうしてなくなった?
『LOGAN/ローガン』(2017年)では、ウルヴァリン(ローガン)の治癒能力が徐々に弱まっていることが描かれています。この変化の背景にはいくつかの要因が関係しています。
年齢と老化
ローガンは、通常の人間よりもはるかに長寿(200年以上は生きていると思われます)ですが、彼の年齢に伴う老化の影響が徐々に現れています。彼の治癒能力は、細胞の再生を助けるものであり、通常の老化を大幅に遅らせてきましたが、何世紀も生きてきた結果、彼の治癒能力も限界に達してきています。時間の経過とともに、治癒能力が衰え、傷が完全に治りにくくなってきたのです。
アダマンチウムの毒性
ローガンの骨格に埋め込まれているアダマンチウム(不壊金属)は、長期間にわたり彼の体に毒素を蓄積させ、徐々に彼の治癒能力を侵食していると考えられます。アダマンチウムは、ローガンの身体にとって異物であり、彼の治癒能力がその毒性と長年戦ってきたため、その能力が弱まってきたのです。この毒素の影響は長年にわたって少しずつ蓄積され、最終的に彼の身体の負担が限界に達したとされています。
精神的な疲労とトラウマ
ローガンは多くの戦いを経験し、仲間や愛する人を失い続けてきました。彼の精神的な疲労とトラウマが、治癒能力に間接的に影響を与えている可能性も考えられます。精神的な負担が身体の回復力を弱めることは、現実でも見られる現象であり、ローガンの治癒能力の低下に寄与している可能性があります。
これらの要因が重なり合い、ローガンの治癒能力が衰えてしまったため、『LOGAN/ローガン』の時点では、彼はかつてのような不死身の戦士ではなく、より脆弱で人間的な存在として描かれています。この設定が、映画のテーマである老いと最期の戦いを強調する要素となっています。
まとめ
『LOGAN/ローガン』(2017年)は、全体を通して暗く重いトーンで物語が進んでいきます。
全盛期のウルヴァリンや若い頃のチャールズを見てきた人にとっては、なんだかとても切ない気持ちになる映画です。ただ、その中にも親子愛や家族愛、仲間愛など、とにかく「愛」を強く考えさせられる作品でした!
生き残ったミュータントたちはどうなったのか?続編に期待です!