ホラー映画だけじゃない!13日の金曜日が“不吉”とされる理由とは?

「13日の金曜日」と聞くと、なんとなく縁起が悪い日のような気がするという人も多いのではないでしょうか。

ホラー映画の影響もあって、“怖い日”というイメージが強いですが、よく考えるとなぜ不吉なんでしょう?

映画が恐怖を増幅させたのは事実ですが、この迷信の背景には、「13」という数字と「金曜日」という曜日、それぞれにまったく別々の歴史があるんです。

しかも面白いことに、古代の人たちは金曜日を“ラッキーデー”と思っていた時代もあったし、13という数字も、国によってはむしろ縁起がいい扱い。
「不吉」というイメージは、後になってから少しずつ積み重なっていったものだったりします。

では、なぜ今では「13日の金曜日=良くない日」という空気が世界に広まってしまったのか?
この記事では、その背景を分かりやすく整理しつつ、本当に不吉なのかどうか、歴史や統計から確かめてみます。

金曜日が“不吉”とされるようになった理由

まずは「金曜日」について。
実は、金曜日は“最初から不吉扱い”だったわけではありません。

古代ローマでは、金曜日は愛と美の女神・ビーナスの日。
フランス語で金曜日を vendredi(ヴァンドルディ) と言うのもこの名残です。

北欧でも同じで、愛や豊穣を司る女神フリッグ(またはフレイア)の日とされ、英語の Friday の語源にもなっています。

つまり、金曜日は本来“縁起のいい日”。
「週で一番幸せな日」と考えられていた地域もあったくらいです。

イギリスには「金曜日に生まれた子は愛され、魅力的になる」という童謡(ナースリーライム)もあり、古くはポジティブなイメージも強かったことがわかります。

金曜日が“不吉な日”の仲間入りをするのは、キリスト教がヨーロッパの中心になってからです。

代表的なのはこの2つ。

  1. キリストが処刑されたのが金曜日
    イエス・キリストが十字架にかけられた日は「聖金曜日(Good Friday)」とされ、この日には悲しみのイメージがつきまといます。
  2. アダムとイブが禁断の果実を食べたのも金曜日とされる
    中世以降の神学的解釈では「人類が楽園を追放された日=金曜日」とされることがあり、これが“金曜日は不吉”というイメージを後押ししました。

中世には「金曜日に旅立つな」という言い習わしも

ヨーロッパの各地では

  • 金曜日に船出すると沈む
  • 新しい仕事を始めると失敗する
  • 結婚式は避けるべき

などの言い伝えが生まれました。

とはいえ、これは古代からずっと続く伝統ではなく、中世・近代の宗教観が作った“後付けのイメージ” という側面が強いようです。

まとめると…

金曜日は

  • 古代:吉祥・女神の日 → むしろラッキー
  • 中世以降:キリスト教の影響で「不吉」に転換

という、かなりドラマチックな変化をたどった曜日なんです。

13という数字が“不吉”とされる理由

次に「13」という数字そのものについて見ていきます。

こちらも金曜日と同じく、昔からずっと不吉視されていたわけではありませんが、特にキリスト教文化圏で強くネガティブな意味が結びつくようになりました。

最後の晩餐

もっとも有名なのは「最後の晩餐」に由来する迷信です。

キリストが磔にされる前夜、イエスと十二使徒が揃って13人で食事をしました。
このとき裏切り者となったユダが13番目の席に着いていたという伝承から、13人で食卓を囲むと不幸が起こるという考えが生まれました。

これが「13人の会食は縁起が悪い」「人数を13にしないように席を調整する」という習慣につながっています。
現代でもフランスには家の番地に13を使わない地域があったり、アメリカのホテルには13号室が存在しない例が見られます。

北欧神話

また、北欧神話にも類似したモチーフがあります。
神々が12人で宴をしていたところに、招かれていない13番目の神ロキが乱入し、その場が大混乱に陥ったという話です。
この物語も、13が不吉というイメージの源になったと考えられています。

「12」との比較

さらに、12という数字が「完成」や「調和」を表す特別な数字だったことも大きな要因です。
1年は12か月、黄道十二宮、十二使徒、12時間制など、古代から“12”は物事の基準になっていました。
それに対して13は「12から一つはみ出た不安定な数字」と見なされやすく、不吉というイメージに拍車をかけました。

とはいえ、世界すべてが13を不吉と考えていたわけではありません。
イタリアでは逆に13を幸運の数字とする地域もあります。
つまり13の評価も文化によって大きく異なるのです。

13日と金曜日が合わさると“不吉”になる理由

二つの不吉要素が合体したと考えられた

「金曜日が不吉」
「13が不吉」

この二つの迷信が合わさったとき、「13日の金曜日は特別に良くない日だ」という考え方が強まりました。
しかし、これは古代からあった伝統的な信仰というわけではなく、比較的近代になって語られるようになった考えです。

テンプル騎士団の逮捕事件が後付けで語られた説

よく言われるのが、1307年10月13日(金)にフランス王フィリップ4世がテンプル騎士団を一斉逮捕したという出来事です。

あまりに大規模で衝撃的な事件だったため、「13日の金曜日=不吉」という印象と結びつけられやすくなりました。
ただし、この事件が当時から“忌まわしい13日の金曜日”として扱われていた証拠はなく、後世の作家や研究者が取り上げて広めたと考える方が自然です。

文学作品やメディアが迷信を強化した

「13日の金曜日」が本格的に“不吉な日”として広まるのは、20世紀に入ってからです。

特に影響が大きかったのは作家トーマス・ローソンが1907年に出版した小説『Friday, the Thirteenth』です。
作中で主人公が“金曜日の13日”を利用して株価を暴落させるという内容で、この作品が「13日の金曜日=良くない日」というイメージを大衆に植え付けました。

そして1980年に映画『13日の金曜日』が大ヒット。
これにより、迷信は世界中で一気に広がり、ホラーと結びついた強烈なイメージとして定着しました。

科学的な裏付けはほぼない

一方で、現代の研究では「13日の金曜日だけ事故が増える」「病院の搬送件数が増える」といった統計的な裏付けはほとんどありません。

むしろ、警戒心が働くことで行動が慎重になり、事故が減ったとするデータもあります。
つまり「不吉」というよりも、人々の意識が作り出した“文化としての怖さ”が大きいのです。

日本で「13日の金曜日」が広まった背景

映画のヒットがきっかけで定着した

日本では、欧米のように13という数字や金曜日に特別な不吉イメージが根付いていたわけではありません。

文化的にも、東アジアでは「4(死)」や「9(苦)」のほうが縁起の悪い数字として忌避されやすく、13はほとんど気にされない数字でした。

そのため「13日の金曜日は不吉」という迷信が広く知られるようになったのは、1980年に公開されたホラー映画『13日の金曜日』の影響が非常に大きいと考えられます。

作品のタイトル自体がそのまま“怖い日”のイメージを日本にも輸入し、一気に世間に浸透しました。

日本の民間信仰には直接のルーツはない

日本の歴史や民俗学を見ても、金曜日に不吉な出来事が集まるといった伝承はほとんどありません。

また13という数字が不吉とされていた記録も乏しく、日本に古くからあった迷信ではありません。

つまり日本における「13日の金曜日の不吉さ」は、あくまで海外文化の輸入によるもので、独自の宗教観や民俗とは結びついていません。

メディアやバラエティ番組によって強化された

映画のヒットに加え、テレビ番組やマンガでも「13日の金曜日=怖い日」という設定が繰り返し使われたことで、日本の大衆文化の中でも恐怖の日として扱われるようになりました。

特に1980〜1990年代はホラー作品が流行したこともあり、この迷信は何度も視覚的に強化され、結果的に“なんとなく不吉な日”として認識されやすくなったのです。

実際には迷信の輸入にすぎない

こうした経緯から、日本の「13日の金曜日」は宗教的な背景に根付くものではなく、映画を中心とした海外のポップカルチャーの輸入に過ぎません。

それでも、多くの人が「今日って13日の金曜日だったのか」と聞くと少しドキッとしてしまうのは、恐怖表現や物語の影響力がいかに大きいかを物語っています。

まとめ

結論から言えば、13日の金曜日が「本当に不吉な日」だという科学的な根拠はありません。

事故が増えるわけでも、特別にトラブルが起きやすいわけでもなく、統計的には他の金曜日とほぼ変わらない一日です。
むしろ慎重に行動する人が増えることで、事故が減っているというデータがあるほどです。

では、なぜ「最悪の日」というイメージが広まったのかというと、歴史的背景と文化的イメージが合わさって強調された結果だと言えます。

金曜日は古代には吉祥の日だったにもかかわらず、中世のキリスト教文化で「不吉」とされるようになり、13という数字も宗教的象徴や物語によって不吉なイメージが付与されました。
そして、この二つが組み合わさった日を扱った文学作品や映画が世界的に広まり、不安や恐怖を印象づけたことが現在のイメージに大きく影響しています。

つまり、13日の金曜日は「最悪の日」というよりも、文化や物語が生み出した象徴的な日と言えるでしょう。

不吉かどうかを決めているのは、その日に起きる出来事ではなく、人々の思い込みや心理のほうかもしれません。
とはいえ、ちょっと不安に感じてしまうのもまた人間らしさの一つです。
迷信の背景を知ったうえで、気楽な気持ちでこの日を迎えるのが一番かもしれません。