2024年9月13日に公開され、大ヒット上映中の映画『スオミの話をしよう』。
三谷幸喜監督・脚本で公開前から話題になっていましたが、絶好調ですね!
今回は、映画の詳しいあらすじと自分なりの感想をまとめてみました。
ラストの結末、犯人、黒幕、協力者まですべて解説しているので、まだ観ていない方はネタバレ注意です。
ストーリー
その日、刑事が訪れたのは著名な詩人の豪邸。
≪スオミ≫が昨日から行方不明だという。
スオミとは詩人の妻で、そして刑事の元妻。刑事は、すぐに正式な捜査を開始すべきだと主張するが 詩人は「大ごとにするな」と言って聞かない。
やがて屋敷に続々と集まってくる、スオミの過去を知る男たち。誰が一番スオミを愛していたのか。誰が一番スオミに愛されていたのか。
スオミの安否そっちのけで、男たちは熱く語り合う。だが不思議なことに、 彼らの思い出の中のスオミは、見た目も、性格も、まるで別人・・・。
スオミはどこへ消えたのか。スオミとは一体、何者なのか。
この秋、三谷幸喜真骨頂!極上ミステリー・コメディの幕が上がる―!
映画『スオミの話をしよう』公式サイト (suomi-movie.jp)
※ここからはネタバレを含みます。
1. スオミの失踪
突然の失踪
著名な詩人・寒川しずお(坂東彌十郎)の妻であるスオミ(長澤まさみ)が、ある日突然姿を消します。
スオミが最後に目撃されたのは、寒川の前妻の子供を学校に送迎している姿でした。この日常的な光景が、物語の始まりとなります。
捜査の開始
警察沙汰を避けたい寒川に対し、彼の世話係である乙骨直虎(戸塚純貴)が独断で警察官の草野圭吾(西島秀俊)を呼びます。
草野は部下の小磯杜夫(瀬戸康史)と共に調査を開始しますが、草野はスオミの元夫であることが明らかになり、やがて屋敷にはスオミの歴代の夫たちが集まってきます。
2. 五人の夫たち
調査が進むにつれ、スオミの過去が次々と明らかになっていきます。
スオミには新旧あわせて5人の夫がいました。
スオミの夫たち
- 魚山大吉(遠藤憲一):スオミの最初の夫。元中学教師で、現在は寒川邸の庭師。
- 十勝左衛門(松坂桃李):スオミの2番目の夫。現在は怪しげなYouTuber。
- 宇賀神守(小林隆):スオミの3番目の夫。警察の捜査二課係長。
- 草野圭吾(西島秀俊):スオミの4番目の夫。現在は警察官。
- 寒川しずお(坂東彌十郎):スオミの現在の夫(5番目)。著名な詩人。
それぞれが見たスオミ
各夫が語るスオミの姿は、驚くほど異なっています。
- 魚山:ツンデレな性格で料理が苦手。常にツインテールの髪型をしていた。
- 十勝:頭が良く、相手に合わせて性格を変える。明朗快活ではっきりとした女性。
- 宇賀神:中国語しか話せない上海出身の女性(誤解)。色気と豪快さを併せ持つ。
- 草野:自己肯定感の低い、おっちょこちょいな女性。小さな声で話し、家事が苦手。
- 寒川:良妻賢母。子供の世話や家事をこなし、学校行事にも積極的に参加。
3. スオミ誘拐事件の発生
誘拐の報せ
調査が進む中、突如スオミが誘拐されたという知らせが入ります。
犯人から3億円の身代金が要求され、状況は一変します。
夫たちの反応
誘拐の知らせを受け、夫たちはそれぞれ異なる反応を示します。
- 寒川:詩人のイメージを守るため、警察沙汰を避けようとする。
- 草野:捜査官として冷静に状況を分析しようとするが、元夫としての感情も垣間見える。
- 他の夫たち:スオミにとって誰が一番大切だったかを競い合う。
しかし、彼らの態度はスオミの安全よりも自身の男らしさや過去の栄光を誇示することに終始しており、真の愛情の欠如を露呈しています。
身代金の要求
犯人からの要求は、3億円を2つのバッグに分け、チャーターしたヘリコプターで公園に落とすというものでした。
この奇妙な要求は、後の展開の伏線となります。
4. 真相解明
身代金引き渡しの失敗
夫たちは慌ただしく準備を整え、ヘリコプターで身代金を届けようとしますが、寒川が身代金を惜しんで空のアタッシュケースを用意したため、引き渡しは失敗に終わります。
内通者の存在
小磯杜夫が、犯人の要求がヘリコプターを所有している十勝の存在を知っていなければ不可能だったことに気づき、内通者の存在を推理します。この推理により、夫たちは互いを疑い始めます。
真犯人の発覚
草野の追及により、内通者が乙骨であることが判明します。しかし、さらにこの誘拐劇の黒幕は、スオミ自身だったという事実が明らかになります。
スオミの共犯者
スオミの計画には、中学生時代からの友人である島袋薊(あざみ)も加担していました。
薊は様々な姿で夫たちに近づき、彼らを巧みに操っていたことが明らかになります。
5.スオミの真の姿
スオミの過去
スオミの行動の背景には、彼女の複雑な過去がありました。
幼い頃から、周囲の期待に応えるため、常に相手の求める理想像を演じ続けてきたのです。
母親の離婚と再婚を繰り返す中で、新しい父親ごとに理想の娘を演じることを学んだスオミは、大人になってもその習慣を捨てられずにいました。
新たな人生への一歩
スオミは狂言誘拐で得た3億円を使い、薊と共にフィンランドのヘルシンキで新生活を始める計画を立てます。
「スオミ」という名前自体がフィンランド語で「フィンランド」を意味し、外交官だった父親が最も愛した街がヘルシンキだったという背景も明かされます。
結末の皮肉
しかし、寒川との離婚届を草野に託した後も、スオミは自分の顔を知らない小磯を次のターゲットとして狙います。
これは、他人に合わせることでしか自己を確立できないスオミの性質を示唆しており、彼女の悲劇的な一面を浮き彫りにしています。
まとめ
そこまで推理要素が強い作品ではないので、犯人=スオミ(自作自演)というのは、それほど驚く展開ではなかったです。(というか、スオミ以外は考えられない?笑)
ただ、「スオミの話をしよう」は、一見すると奇想天外なコメディに見えますが、その底に流れる主題は非常に深いものだと思いました。
- 家父長制や男性優位主義への批判
- 自己アイデンティティの探求
- 社会的期待に応えることの苦悩
人間関係における「演技」と「真実」の境界線を鋭く問いかけており、主人公スオミを通じて、私たちは他者の期待に応えるために自分を偽り続けることの苦しさと、そこから抜け出すことの難しさを目の当たりにします。
同時に、5人の夫たちの姿を通して、私たちは自分の理想を他者に押し付ける危険性を認識させられます。
彼らは皆、自分の思い描く「理想の妻」をスオミに求め、本当の彼女を見ようとしませんでした。
スオミの行動は極端ですが、私たち一人一人の中にある「本当の自分」を見出したいという願望を象徴しているとも言えるでしょう。
あなたは本当の自分で生きていますか?
あなたは他者の本当の姿を見ようとしていますか?
この映画は、そんな自問の機会を与えてくれるものでした。
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